仕事論は、マレー人から全て教わりました

 

 

22歳まで日本育ちですが

ビジネスという括りではマレーシア育ちです。

 

社会人初日からマレー人にマレー流で育てられた日本人もレアなんじゃないかと思うので

今日は久しぶりにマレーシアの前職のお話をします。

 

かなり前にマレーシア人の仕事っぷりをお話したことがありますが、前職は大事な書類はまだまだ日本語ばかりのがっつり日系の会社。

駐在員で”ボス”としてしか日本人が来ないマレーシア支部で、日本人の新卒が入るということがそもそもレアでした。

 

私のチューターは、入社当時5年目のマレー人。

マレーシアでは、人種別でチームを組むのを好むマネージャーも多いのですが、金額の交渉などをやる部署は基本的にお金に強いマレチャイ(中華系マレーシア人)ばかり。駐在員の日本人を除いて、当時彼以外は全員マレチャイということもあり、彼の下に私。準マレーチームの誕生です。

 

日本人が下につくなんて扱いづらいわ!最初は戸惑ったそうですが、今となってはアディック(マレー語で、little sisterの意味)と呼んでくれて、公私ともになんでも話す本当にアバン(=お兄ちゃん)の関係です。

 

そんなアバンが教えてくれた、マレー流のビジネススタイルのご紹介です。

 

ー怠け者ほどアタマを使え。

”俺は怠け者だ。ただ昇給をちゃんとしながらラクするとなると、結構アタマを使うんだよ”とよく言っていました。

やることが増えても早く帰る、悪目立ちせず極力働かない手段を全力で考えるのが真の怠け者だと。

やることを常に書き出して、順番をふって、これだけやれば今日はOK!だけを終わらせ、それ以上はやらない。

やった方がいいけど放置でも影響ないタスクは丸捨て。それでもやるべきことは全部終わっているので、意外となんとかなるものです。

 

ー怒る奴は嫌い・悪い・無視でいい。

”ビジネスで、力とか声の大きさで相手をコントロールしようとする馬鹿は無視でいい。正しい人は、大声出さずに説得できるでしょ。”

マレーシア人にとって、怒りの感情は恥。自分は頭悪いですと言っているようなもの。理由は何であれ怒った方が負け。

初日から今まで、彼に怒られたことはありません。

ただし、これが間違ってて、ここが嫌いで、ここがダメだというのは面と向かってにっこり、徹底的に言ってきます。

大声の支配より、感情を排除した徹底的な理詰めの方が恐ろしいことを、マレー人はよく知っています。

 

ーボスが赤って言えば、赤だ。

”俺のイメージだけどね、例えば黄色を、ボスがこれは赤だって言ったとする。

大半の国の人は”ボス、これは黄色です”と言う。

日本人は遅くまで残ってその黄色を赤に塗り替える。

マレーシア人は、”あぁボス、これは赤だね”って言って、”これ黄色だけど、ボスが赤って言ってたから赤ね”で全員納得して終了。

真実のために戦っても給料は変わらないからね。”

このテキトーさが、マレーの強みで、魅力です。

 

ーごちゃごちゃ言わずにデータ出そう。

”言いたい事はわかった。でデータはどこ?”

彼は超データ人間。ビジネスにおいてデータの無い話は聞けない。

数字なんて大嫌いな私は何度も絶望に陥れらたけど、確かにデータがあると、余計な交渉も不要、異常事態のときに判断が早く、優先順位決めも簡単で、今後の予想も手間いらず。

何でもリスト、データにします。ロジックとかはオマケで、ラクするためにデータが必要だとのこと。どうりでアバンがお好きな訳です。

 

ー新人トレーニングは、どこまでも過保護。

マレー流の教育方法はスプーンフィードといって、親がスプーンで食べさせてあげる、あれくらい過保護な教育スタイル。失敗させて伸ばすなんてもってのほか。

最初の1度は見てるだけ。2度目以降も終わらそう&間違えそうになると、交代。上司への報告も一人前になるまではやらなくていい。と、かなり過保護。

マレー人には、新人に試練をという発想がなく、幼い兄弟を育てるように扱うのが普通。試練なんて与えたらかわいそう、そんなん与える会社は辞めて当然なのです。

 

ー書く、例を作る、視覚化する。

何かやってと頼む時や、何かを説明するとき、必ず紙やホワイトボードに書いて視覚化します。

これは唯一のマレー人で、日々違う人種とばっかり関わるアバンの知恵。口頭で詳しく説明するより、ちょっと時間がかかっても一個例を作って、見せて、あとはよろしくの方が、後で訂正などの時間と手間が省けるから結果ラクになる。とのこと。

 

ー担当はふたりです。暇な方がやります。

チームの担当振り分けは無し!100%シェア。もちろんto doリストも完全シェア。データは全部ふたりの共有フォルダへ。フォーマットから色まで共有してるので、経過説明も不要。

これは、当日欠勤、無断欠勤の多いマレー人代表のアバンが突然片方に何があっても大丈夫なようにと作ったワークシェア。自分のコピーが1人いるので、緊急事態もお休みの時もばっちり。

ただし、このワークスタイルは、チームの仲が相当良いことと、周りの理解を得られることが条件。彼以外にも主にマレー人でこういうチームをたまに見ます。

 

ー問題がわからないのが一番の問題。

”大体のトラブルは、問題が何かわかれば、あとは詳しい人に聞くだけでそんなに難しくない。”

”ノープロブレム!ってデータを見ないで言う奴そのものがまずプロブレムだ。”

何が足りなくて、何が欲しいのかに集中しなさい。といつも言っていました。

 

ーたまには、地道なマニュアル作業もやろうね。

ラクするツールを作るための1回の痛い大作業はちゃんとやります。

頭痛いもうやだタバコいくぞー!と言いながら丸めた会社案内でいきなり叩いてきたりとトチ狂うこともしばしば。(そしてこのトチ狂いも見事に伝染してしまった。。。)

効率が上がる新フォーマットや、時間がかかるけど便利なデータは、すぐに取り込む。この日!と決めて一緒に缶詰。今後のラクのための努力を惜しまないのが真の怠け者なんです。

 

ー余計なことは喋るな、書くな。

喋る量が増えると、それ何?詳しく。と突っ込まれるリスクが増える。

長いメールを書くと、長い返信が返ってくる。

”アディック、あんまり張り切って色々喋らないように気をつけてね。めんどくさくなるから”とのこと。

 

ー迷惑かけてなければオッケー。

遅刻、当日欠勤、(有給は使い切り済みで)無給欠勤の常習犯。でも、”確かに俺の勤務態度は悪いけど、それで何か目に見えて損益を与えてないからOK”なんです。

別に仕事で何でも即レス便利な子になった地点でたかが仕事だし、便利になった地点で成果が一緒ならお給料に差が出るとは思えないなら、そこまで頑張る意味はないのです。

 

ーハードワークは、得意な子に任せればいい。

”仕事大好きって人がたまにいて、そういう人を真似た地点で好きじゃないから勝てないの、俺らは。そう思うでしょ?”

ハードワークは好きでやってる子に任せて、自分のできることだけやればいい。勝てるフィールドだけで戦えばいいんです。

 

ー周りが残っていても帰れ。帰れないなら、逃げろ。

”自分のやることが終わったら、帰れ。最悪逃げろ!”と、一緒に逃げた回数は数知れず。

その代わり、日系おなじみの謎に当日来る今日中までのものや、謎に夜8時から始まる会議は対応して、早く帰る→暇でしょ?→追加の仕事!のループもうまく回避し、全く現地化してないビバ残業の日系企業で生き残っていました。

洗脳完了済み、早く帰るのに慣れてなくて習慣で残業するマレーシア人も多いなか、流されるなということです。

 

ービジネスは、お金と人情

マレー人の多くが感情、人情に弱い温厚な性格。

相手の言っていることが正しくて、データがあって、なおかつこれはかわいそうだと判断すると、実績に響かない程度ならルールちょい無視の情状酌量はOK。

ちょっとの利益のために締め上げて後で嫌われるより、ちょっと逃げ道を作っておいていざとなった時に助けてもらえる方を好みます。

 

 

マレー人は、温厚でのんびりな人が多いので決してビジネスライクな人種ではないと言われています。

確かに仕事中に私用メッセージ、Facebook、ゲームは当たり前。

有給使いきってるけど無休休暇で休む、傷病休暇もどうにか使い切るなど、日本人の駐在員は”またか!”とよく頭を抱えてました。

 

ただ、ほんとの兄妹みたいな溢れんばかりの人情教育と、一緒にラクするために何時間もあーだこーだ突き詰めた効率化、何を聞いても絶対に助けてくれる信頼関係のおかけで、ここまで人の言うこと聞いたことない!ってくらいアバンの言うことは素直に聞けていました。

ちょっと時間はかかるし、不器用なアプローチだとしても、人間としてビジネスをしているこのやり方が好きです。

 

新しく入ってきたマレー人の子にこの方法でトレーニングをしてみると、結構無理なお願いも聞いてくれたし、意見もくれたし、相当頑張ってくれたので、結構うまくマレー人向けにカスタマイズされている仕事の進め方だと思います。

 

”アディック生きてるかー?オフィスが静かすぎてやる気が出ない、帰ってこいー!”とたまーにwhatsappが来ます。

もう違う業界だけどまだ何か聞いちゃうんだろうなと思うと、今後どこで何をやっても、私のキャリアはアバンのお手製。Made in Malaysiaもいいものですよ(*´ω`*)

記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次