ニュージーランドの弊社、オフィスを半分断捨離しました。

新型コロナウイルスの影響もあり、どんどん在宅勤務や”ニューノーマル”が広がっていますね。
中には完全在宅に切り替えて郊外に引っ越したりする人も見かけます。

ニュージーランドは、このような新しい働き方に非常に柔軟な国です。
社員150人と、ニュージーランドではかなり大手で保守的な弊社でもその動きを取り入れました。

それは、オフィススペースを半分断捨離し、社員全員週3オフィス、週2で在宅をデフォルトとするバランスワークに移行する。という変化です(曜日は会社指定)。

大手でもこんな大胆な決断を2020年の8月に創案、2021年1月から完全施行した経緯と2ヶ月働いてみての現状をお話しします。

ちなみに弊社は家電メーカーです。製造はニュージーランドで行なっていないため、販売、物流、修理のみを請け負っています。

目次

オフィス半分断捨離に至った経緯

まず、なぜ弊社がオフィス半分断捨離という大胆な結論に至ったかのお話しです。

コロナの影響がニュージーランドに及ぶまで、弊社は典型的な保守的な大企業でした。
在宅勤務は日本の一般的な企業よりは許可がとりやすいものの、それでも理由とマネージャーの承認が必要でした。

通常は週5日、8.30amから5pmまで、お昼休憩1時間(時間指定なし)、フレックスはOKだけど勤務必須という状況でした。
当時の日常はこちらです。
残業ゼロ!ニュージーランドでのオフィスの1日を公開するよ。

ところが、ニュージーランドにコロナが直撃すると
ニュージーランドはウイルスの完全排除を目指し、2020年3月26日から国全体で最低4週間のロックダウンを開始するということが決定しました。

ロックダウンの決定から施行までは3日ほどと非常に短期間だったにも関わらず、全員在宅が必須となってしまいました。

弊社では、コールセンターは設備、経理は財務情報の社外秘のルール上在宅勤務が許可されていませんでした。

とはいえ、スーパーと医療機関以外すべて強制閉鎖が強いられるロックダウンで「社外秘だから…」と勤務が許されることはありませんでした。

そのため、包括的な在宅勤務可能な形態が求められるようになりました。

もともと多くの部署が在宅勤務可能な設備は持ち合わせていたため、そこまで大きなパニックにはなりませんでしたが大きな変化でした。

IT部署の頑張りにより、修理や配送など物理的な理由以外での在宅環境がなんとか1週間で整いました。

幸い、私の部署はもともとどちらもできるように設定されていたので、何も問題なくロックダウン初日から通常在宅勤務でした。

そして、約2ヶ月に及ぶロックダウンが終わった5月、まだ100人以上が同じ場所に集まってはいけないというルールが政府から発表されました。
150人以上いる弊社では、社員を半分ずつに分け、週2~3での交代通勤の案となりました。

その際に、弊社社員の多くが

「そもそもこの2ヶ月在宅で問題なかったのに、どうして週5でオフィスに戻る必要があるの?ガソリンも時間も節約できるし、今後もずっとこれでよくない?」

と様々な部署からボトムアップで在宅とオフィス勤務の併用を今後も継続したいという声があがりました。
(私ももちろんこのリクエストに参加しました。結果社員の90%近くが併用を望んでいるという結果になりました)

もちろん顔を合わせた会議や同僚とのコミュニケーションも大切との意見も多かったので
ずっと在宅ではなく半分ずつでいいのでは?という案に落ち着いたのです。

その結果を踏まえ、ロックダウンで莫大な損出を負ったことも重なり、
5月末ロックダウン段階解除から約2ヶ月後の8月上旬に、
オフィススペースを半分解約して今後も在宅にしてオフィスにいる人数を半分で固定しよう。という結論に至りました。

まずは駐車場から、段階的に変更

思い切った決断とスピードはニュージーランドのお家芸ですが、
それでも保守的な弊社の変更は段階的でした。

オフィスを半分貸し出すか3分の1貸し出すかというスペースの問題は8月の段階では未定だったので、まずは社員用に借りていた社外の駐車場の解約から始まりました。

社外の駐車場は会社の駐車場が足りない30%の社員のためだけのものだったので、半分にした段階で必要なくなったのです。このように確実に必要ないものから進んでゆきました。

そして、全員が週3になったらどれくらいのオフィススペースが必要かの計算を総務が行ない、2~3ヶ月の半分ローテーションの結果から、半分のスペースの解約が決定しました。
決定は9月末くらいでした。

決定から解約まで2ヶ月半ほどあったので、その間は現状のオフィススペースのまま半分ずつ勤務でした。オフィスはガラガラです。

もともと固定のデスクではなく、全員ロッカー支給&来た順に指定のエリアの空いている席を使うシステムだったため、デスク配置などの大きな問題は起きなかったものの、解約するスペースからの設備の運び出しなどはこの期間に行なっていました。

また、半分断捨離に伴い余ったモニターや椅子、キーボードなどは希望者に無償永久貸し出し(壊れてもOK。退社の際の返却も任意)という実質プレゼントを行ない、全員大歓喜でした。

設置完了\( ‘ω’)/♪
家に持ち帰って初めて気づく。

スクリーン、思ったよりでけぇ…(*゚ロ゚)!
思ってもいなかったクリスマスプレゼントがきた!弊社ありがとう😍❤️ https://t.co/yY4QvXbzhS pic.twitter.com/5EfiDqkPR5

— ジプシーワーカーズ#旅人OL🇲🇾🇳🇿 (@gypsyworkers) December 16, 2020

実際のところ真相は不明ですが、全員が強制在宅になる中でWiFiや電気代の補助はないの?という声を円満に沈めるための解決策だったんじゃないかとの噂です。

駐車場がなくなり、段階的に運び出しを行なったエリアからどんどんと使用廃止をしてゆき、11月末には完全に半分になりました。
もともと2フロアをまるっと使用していたのを1フロアにするという半分断捨離だったので、移行自体はスムーズでした。

その際に、オフィスの半分断捨離に伴い現状の駐車場もさらに半分になるということで、駐車場が足りなくなってしまいました。

ニュージーランドは最大都市のオークランドですら中心部以外のバスは30分に1本、カバーしていないルートも多く車通勤が当たり前の中、駐車場問題は今でも続いています(現状は後ほどお話しします)。
※追記:数ヶ月ほど続いた駐車場足りない問題は、アプリを使って駐車場を予約するシステムで足りない人は事前に準備か在宅の許可をとる(多すぎる場合は事前予約をするよう指示が入る)ことにより解決しました。

交通費支給は全くしないニュージーランドでは異例の、車通勤をやめてくれたら通勤手当てで150ドル(約12,000円)毎月支給するよ!と呼びかけても、バス代だけでほとんどの人が往復800円毎回かかる&バス通勤に切り替えると余計に往復で1時間以上かかり、だれも協力しなかったのです。

とはいえ、それ以外の移行は非常にスムーズで、最終的なスペースから割り出した通勤と在宅の勤務表が固定され、6月から始まっていた在宅とオフィスの併用から、曜日変更以外の変化はありませんでした。

現在断捨離から2ヶ月経ちましたが、むしろ半分のスペースに半分の社員がいるので、以前のように満員のオフィスで活気が戻って来ました。

オフィスと在宅のバランスについて

最初のボトムアップのリクエストでも多かった意見が「やっぱり同僚との会話や会議は対面がいいよね。」とういことで、週に何日かはオフィス勤務がという意向で社内全体が落ち着きました。

私自身もこれは賛成です。複雑な要件や気軽に何かを聞いたり雑談したりは、やっぱり物理的に近い方が便利です。

とはいえ、週に5日ずっと対面の要件があるかといえばほとんど全員???です。
オフィス勤務でもずっと作業で1日終わる日がある人も多い中、弊社がたどりついた結論は「バランスワーク」でした。

なぜフレキシブルではなくバランスワークかというと、
出勤日が会社から指定されており、在宅勤務日数や曜日は自分で選べないシステムにしたからです。

自分で選ぶとなると、曜日にばらつきがでたり、本来対面のほうがいい部署同士の人がいつまでも同じ日に出社しなかったりといろいろと問題が起こります。
スペース的にも全員が来てしまってももう収容できるハコはありません。そのため、在宅勤務日は部署ごとに会社指定となりました。

在宅日に出勤、出勤日に在宅どちらの場合も変更にはマネージャーと人事どちらの承認も必要です(メッセンジャーの軽い会話でOK)。

私の部署は火曜日と金曜日が在宅で、残りがオフィスです。

一応会社も公平に勤務日を扱うことを気を使っているらしく、みんなが来たがらない傾向が多い月曜日か金曜日のどちらかは必ず在宅になるように配慮されているとのことです。

実際にバランス勤務をしてみて思うのが「最高すぎて元には戻れない」です。

土日と違い在宅勤務日は日中ずっと家にいるので突然の雨にも対応できる在宅日の洗濯は最高です。
外食の高いニュージーランドでお昼ご飯のお弁当は面倒な準備でしたが、その必要も半分になりました。

また、在宅の日は作業に集中できる、勤務日にミーティングを集約できるなど、タイムマネジメントも簡単になりました。
正直在宅の日に仕事が増えないように(在宅中に洗濯、掃除やらしてるのは内緒だけどみんな同じ)集中もできます。本当にメリットしかありません。

正直週3在宅がベストだと思っていますが、まぁその辺はしょうがないですね。

ちなみに、完全在宅のリクエスト(郊外に引っ越したいなどが理由)は弊社ではまだ承認できないとのことです。

私も聞いてみましたが、週3でこれる人がいる中オフィスに全くこないメリットが証明できれば打診はOK、その後審査となります。
とはいえ全員に打診されるリスクを回避するために審査は超厳格と聞いています。私は会社がビザを出してくれているので打診権もありません。

これは超保守的な大企業の弊社だからですが、ニュージーランドの企業ではこのような承認も以前よりも積極的に増えています。

在宅が毎週2日あることで困ることも全くありません。本当に移行してくれてよかったです。

就学前の小さい子供がいる同僚は、仕事中に泣くわ走り回るわする赤ちゃんを置いて勤務できないとのことで、週5の保育園はそのままのようです。
学校に行く子供を持つ社員は、独身やすでに自立した子供がいる家庭よりもそのメリットが大きくより満足度が高いと聞いています。

会社の提示する課題と個人的な感想

このバランスワークは、実質開始して9ヶ月、オフィススペース完全断捨離から2ヶ月が経ちましたが
会社は固定費の削減、社員も大喜び、業績や作業効率にも変化なしというWin-Winの結果に終わりました。

唯一の問題は先ほども少しお話しした駐車場足りない問題です。

現在では週3出勤日のうち週2は駐車場が割り振られ、残りの1日は近所の有料駐車場を使うか、空きがでたら個人的にここに空いたからここ使っていいよという旨のメールが前日の夕方に届きます。

会社が提示している問題は以下となります

・駐車場半分断捨離の不満の声が大きい
・勤務態度に疑問が出た社員が一定数いる(他の日も勝手に在宅にする、出勤日の遅刻、在宅勤務時間中にに個人の予定を入れていることが発覚するなど)
・全員が集まれる物理的なスペースがないので会社のイベントやオフラインの全体会議の実質廃止
・在宅勤務日に遅延が生じる業務が一部ある
・財務結果など全体会議がオンラインに移行し、ネットワークトラブルなどで行き渡らない人が毎回発生する
・修理センターなど、それでも物理的に毎日来ないといけない一部社員の不満の声

私の個人的な感想は「最高。もう戻れない」に集約されるのですが、個人的に詳細を挙げてみると

・在宅が定期的にあることはメリットしかない
・駐車場問題は確かにあるけど、在宅勤務のメリットに比べたら大して支障はない
・在宅勤務日は結局一日中家にこもりがちになり、ちょっと外向性と運動量が減った気がする
・在宅日のパフォーマンスに変化はないけど、仕事が少ない日は人には言えない勤務態度…。
(とは言え出勤日も仕事が少ない日は頭の中は完全にお留守だったので変化なしw)
・全部在宅での場所にとらわれない(打診または転職)キャリア形成などと自由な発想がどんどん出て来た
・ロジスティックという場所ありきの仕事でここまで支障がないのは驚愕

ちなみに現在は断捨離した半分のオフィススペースにすでに他社が入っているので、この変化は完全に固定となり、ニューノーマルとなりました。
こんな大胆な動きがサクッとできるのは、とりあえずやってみてダメならダメになったら考える。が浸透しているニュージーランドならではですね。

現在もニュージーランドではコロナの完全排除を目指し経路不明の感染者が1人でも出たら即時ロックダウンを数日間繰り返しています。
在宅が当たり前になったこの国での次の動きを楽しみにしています。

PS.写真は何度かこのブログでも登場しているオークランド市街を見渡せる弊社窓より

記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次